第56回 感情と生存本能の意外な関係
- 内山克浩
- 2025年12月22日
- 読了時間: 3分
社会保険労務士の内山です。
いつもありがとうございます。
私たちが日常的に抱く感情の背景には、遥か昔から受け継がれた脳に備わる原始的な生存システムが深く関わっています。
脳の原始的な部分は、脳の奥深くにあり、数万年も前に人類の祖先が厳しい自然環境の中で生き延びていた時代に発達したものです。
当時の人々は、激しい嵐や肉食動物などの様々な脅威に常にさらされながら生きており、それらから身を守る必要がありました。
そのため、扁桃体(へんとうたい)をはじめとする原始的な脳組織は、現代においても危機的状況に遭遇すると瞬時に反応し、活発に働き始めます。
扁桃体は、アーモンドのような形で、大きさは親指の爪ほどしかありません。
しかし、その内部は13以上の部分から構成され、各部分がそれぞれ異なる機能を持つと考えられています。

扁桃体は、恐怖の回路の中心的役割を担っています。
例えば、閉所恐怖症、暗所恐怖症、広場恐怖症、そしてヘビやクモに対する恐怖などがその一例です。
これらの恐怖が現れると、扁桃体が活性化し、理性的な判断を司る脳領域のコントロールを奪ってしまうのです。
まさに恐怖回路の司令塔といえる存在です。
扁桃体の主な働きは、危険を即座に察知し、私たちがそれに反応するのを助けることです。
戦うか、じっと身を潜めるか、それとも逃げるか。どの選択肢を取るにせよ、扁桃体は私たちが危機的状況から最速で脱出できるよう手助けをするのです。
自分自身の恐怖の記憶は、その後の思考パターン、判断基準、行動様式、さらには感情のあり方にまで長期的な影響を与え、個人の性格形成にも深く関係してきます。
ただし、現代の生活においては、この原始的なシステムが必ずしも適切に機能するわけではありません。
平常時に、私たちの脳は楽観的な解釈を好む傾向があり、起こりうるリスクを過小評価しがちです。
一方で、実際に危機に直面すると、今度は過度に反応してしまうこともあります。
ここで重要なのは、この恐怖のシステムが最優先するのは「感情」ではなく、「生存」であるという点です。
感情というのは、恐怖反応がもたらす一時的な現象に過ぎず、本当に切迫した状況では、感情よりも生き延びるための行動が優先されるのです。
この仕組みの強力さを物語る実例があります。
銀行強盗に銃を突きつけられた銀行員は、事件後、強盗が覆面をしていたかどうかさえ思い出すことができませんでした。
これは、最大の脅威である「銃」から生き延びる行動が優先され、銀行員の注意をすべて奪ってしまったためです。
このように、脳は私たちを危険から守り、生き延びるために設計されています。
それは進化の長い歴史の中で培われてきた、生きるための知恵と言えるでしょう。




