第21回 なぜ部下は報告を避けるようになるのか?
- 内山克浩
- 2024年2月26日
- 読了時間: 3分
更新日:2024年11月17日
社会保険労務士の内山です。
いつもありがとうございます。
上司の立場の方は、必要だと判断すれば部下を叱ることもあるかと思います。
叱るときの脳は「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」という部位が活性化しています。
これは怒りやイライラを感じやすい部位で、すべての哺乳類が持っています。私たち人間も、生まれながらに「イラッ」とする怒りやすい生き物なのでしょう。
怒りを抑える役割を果たすのは脳の「前頭葉(ぜんとうよう)」という部位で、これが作用し始めるまでに3〜5秒かかります。この間に腹式呼吸を3回行うことで落ち着きを取り戻すことができます。
人はしばしば、自分の基準で他人を評価します。自分に厳しい人は部下にも厳しくなりがちで、その反対もまた真です。自分を認めない人は、部下を認めない傾向が強くなることがあります。
部下が叱られたとき、部下の脳内はどのように反応すると思いますか?

例えば、部下が仕事のミスを報告したとき、上司は叱ることで改善を目指しても、叱りが効果的でない可能性があります。
その理由は、脳が直近の出来事を特定の原因と結びつける特性によるものです。もう少し詳しく言うと、ある出来事(A)が起こった後60秒以内に起こった出来事(B)を脳はAと結びつけます。
すなわち、部下がミスを報告した(A)後60秒以内に起こった出来事(B)は叱られたことです。したがって「報告した」と「叱られた」が結びついてしまい、「ミスをした」と「叱られた」は結び付いていないのです。
もちろん部下は、「ミスをしたから叱られた」と表面上は理解していても、潜在意識では「報告したから叱られた」と認識しており、これが何度も続くと、叱られる(本能的に危険と感じる)ことを回避するため「報告すること」を避けるようになるのです。
叱られることが続くと、気落ちした部下は次のような反応が起こることが分かっています。
①ご褒美をあげても喜ばない
②自分自身のことを過剰に卑下する
③少しのリスクでも逃げようとする
④周りの状況が見えなくなる
⑤反応が鈍くなる
⑥必要以上に不安を感じる
このような反応は精神的な負担の表れで、最終的には退職や精神疾患につながるリスクを高めます。
すぐに叱らずに「報告してくれてありがとう」と感謝を表現する言葉掛けが有効です。
感謝をすることで、部下は「ミスの報告をした」後の60秒以内に「ありがとうと感謝される」ということが結びつき、今後は報告をためらわなくなります。
思いやりや愛情ある言葉掛けは、部下の恐怖心を減らし、ポジティブな行動を促します。
また、このような言葉は愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンを増やす効果もあります。今後は叱る前に、まずは深呼吸を3回して自分の感情を落ち着け、報告に対する感謝を伝えましょう。
その後、適切な注意や指導を行うことで、ミスの改善と良い関係の構築が期待できます。




